はじめに
令和8年(2026年)度末をもって、手形・小切手の電子交換所が終了し、これにより紙の手形・小切手の取引が全廃されることが決まりました。特に、手形については「下請けいじめの温床」とも指摘されており、今後はデジタル決済への移行が加速すると考えられます。
本記事では、行政書士の視点から「手形と小切手の違い」、それぞれの「メリット・デメリット」、そして「全廃の影響」について分かりやすく解説します。
目次
- 手形と小切手の違い
- 手形のメリット・デメリット
- 小切手のメリット・デメリット
- 手形・小切手全廃の影響
- まとめ
1. 手形と小切手の違い
手形と小切手はどちらも「支払いを約束する証書」ですが、以下のような違いがあります。
項目 | 手形 | 小切手 |
---|---|---|
支払いのタイミング | 期日(将来の日付)に支払い | 振り出した時点で即時支払い |
用途 | 掛取引などの信用取引に利用 | 即時決済の手段 |
支払い義務 | 振出人と裏書人に支払い義務がある | 振出人の口座に残高がないと不渡り |
交換所での処理 | 手形交換所を通じて処理 | 小切手交換所を通じて処理 |
手形は「将来の支払いを約束する」性質があり、特に企業間取引で資金繰りの手段として使われてきました。一方、小切手は「すぐに支払う」ための手段として利用されます。
2. 手形のメリット・デメリット
メリット
- 企業が資金繰りを調整しやすい
- 取引先の信用を示すことができる
- 割引(手形を現金化)することで資金調達が可能
デメリット
- 期日前に現金化しようとすると割引料がかかる
- 支払いが先延ばしになるため、下請け企業が不利な立場になりやすい
- 不渡り(支払不能)になると信用問題に発展
手形は特に中小企業にとって資金繰りの手段として利用されてきましたが、下請け企業にとっては「支払いが遅れる」ことで経営リスクが増す問題もありました。
3. 小切手のメリット・デメリット
メリット
- 即時決済が可能で、資金移動がスムーズ
- 取引先の信用確認が不要
- 不渡りになるリスクが低い(銀行に資金がある場合)
デメリット
- 口座に残高がないと支払い不能(不渡り)となる
- 紙の管理が必要で紛失リスクがある
- 偽造や盗難のリスクがある
小切手は主に「現金の代わり」として利用され、即時決済できる利便性がありますが、振出人の口座に残高がないと不渡りとなるリスクがありました。
4. 手形・小切手全廃の影響
企業の影響
- 資金繰りの方法が変化:手形の利用ができなくなるため、資金調達は銀行融資やデジタル決済へ移行
- デジタル決済の普及:銀行振込や電子決済システム(EBデータなど)の活用が進む
下請け企業の影響
- 支払いサイトの短縮:手形による長期の支払い猶予がなくなり、資金回収のスピードが向上
- 未払いリスクの低減:手形の不渡りリスクがなくなり、健全な取引環境が整う
手形・小切手の廃止によって、企業の資金繰りの方法が変わるため、デジタル決済や銀行融資の活用がより重要になります。
5. まとめ
2026年度末をもって手形・小切手の電子交換所が終了し、紙の取引が全廃されることが決まりました。
- 手形は将来の支払いを約束する証書で、資金繰りに活用されてきたが、下請け企業に負担が大きかった
- 小切手は即時決済できる手段で、資金移動がスムーズだったが、不渡りリスクがあった
- 今後は銀行振込やデジタル決済が主流となり、企業の資金管理の方法が変わる
これからの時代に備え、デジタル決済の活用方法についても検討していくことが重要です。
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