相続手続きを進める際に便利な「法定相続情報証明制度」。これを利用すると、戸籍謄本の束をいちいち提出する手間が省け、相続手続きがスムーズになります。今回は、実際に取得してみた経験をもとに、必要書類や手続きの流れを詳しく解説します。
目次
法定相続情報証明制度とは?
この制度は、相続人が法務局に戸籍一式を提出し、法定相続情報一覧図(相続関係を示した図)を作成してもらうことで、同じ情報を何度も提出する手間を省ける仕組みです。不動産の名義変更や銀行手続きなど、さまざまな場面で活用できます。
取得に必要な書類
法定相続情報証明制度を利用するためには、以下の書類が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(本籍が記載されたもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 申出人(相続人)の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- 法定相続情報一覧図(自作または法務局の様式を使用)
- 申出書(法務局のホームページからダウンロード可能)
書類に不備があると受理されないため、事前に確認しておきましょう。
手続きの流れ
- 必要書類を準備 戸籍謄本や除票を本籍地の市区町村役場で取得します。
- 法定相続情報一覧図を作成 書類をもとに、相続関係を示す一覧図を作成します。
- 法務局へ提出 申出書と必要書類を管轄の法務局へ持参または郵送します。
- 審査・発行 法務局が書類を審査し、問題がなければ法定相続情報一覧図の写しが発行されます。
通常、1週間ほどで発行されますが、法務局の混雑状況によっては時間がかかることもあります。
証明書が使用できる場面
法定相続情報一覧図の写しは、以下の手続きで利用できます。
- 不動産の相続登記(司法書士に依頼する場合も)
- 被相続人名義の不動産を相続人に変更する際に使用。
- 全国どこの法務局でも利用可能。
- 銀行や証券会社での相続手続き
- 被相続人の預貯金を相続人に分配する際に必要。
- 銀行によっては追加の書類が求められることもある。
- 自動車の名義変更(軽自動車・普通自動車)
- 陸運局で名義変更手続きをする際に提出。
- 年金や生命保険の請求手続き
- 遺族年金や保険金の請求時に、相続人の証明として活用できる。
- 相続税の申告(税理士に相談するケースあり)
- 相続税申告時の相続関係説明資料として使用可能。
行政書士に依頼する場合の費用
自分で手続きをすることも可能ですが、戸籍謄本の収集や一覧図の作成に不安がある場合は、行政書士に依頼するのも一つの方法です。費用の目安は以下の通りです。
- 戸籍収集代行:10,000円~20,000円(戸籍の数による)
- 法定相続情報一覧図の作成:10,000円~30,000円
- 申請代行:10,000円~20,000円
※地域や事務所によって異なるため、事前に見積もりを取ることをおすすめします。
その他の士業に依頼する場合
- 司法書士:不動産の名義変更(相続登記)を行う
- 税理士:相続税の申告が必要な場合に対応
- 弁護士:相続トラブルが発生した際に対応
士業に依頼するメリットとデメリット
メリット
- 手続きの負担軽減
- ミスの防止
- 専門知識の活用
- 他の相続手続きもサポート可能
デメリット
- 費用がかかる
- 士業によって対応範囲が異なる
- 依頼先による質の差
まとめ
法定相続情報証明制度を利用することで、相続手続きの負担を大幅に軽減できます。書類の準備が少し大変ですが、一度取得すればさまざまな手続きで活用できるため、早めに準備しておくことをおすすめします。
自分での手続きが不安な場合は、行政書士に依頼するのも選択肢の一つです。士業に依頼する際は、メリットとデメリットをよく理解し、相続の状況に応じて最適な方法を選びましょう。
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